研究概要 |
平成15年度は、心理言語学、認知心理学、および言語理論を基盤として、第二言語習得のメカニズムにより直接的に即したフォーカス・オン・フォーム(focus on form)指導形態の構築を試みた。具体的には、Leveltのプロダクション・モデルを中心的枠組みとしながら、アウトプット重視のフォーカス・オン・フォームを精級化した。これは従来story reproduction, text reconstructionと呼ばれているアウトプット活動の中に、学習者の注意を特定の言語項目に向けさせる指導を組み込むことによってフォーカス・オン・フォームを可能にするものである。この指導形態の特徴として特に重視されるのは、目標言語項目の形式、意味、機能の3つを学習者が一つの認知的出来事の中で同時に処理するのを促すこと、および、学習者が中間言語文法と目標言語文法を内的に比較するのを促すことである。後者は特に中間言語文法に関する仮説形成(hypothesis formation)および仮説検証(hypothesis testing)を促すものとして注目される。 さらに本年度は、上記のフォーカス・オン・フォームの効果を実証的に調べるために2002年度から継続している予備研究のデータを分析した。その結果、目標言語項目を習得するための心理言語的レディネスが整っている学習者に対しては、この指導形態が効果的であることなどが明らかにされた。平成16年度は、より妥当性の高い方法で学習者の目標言語習得度合いを測定し、アウトプット重視のフォーカス・オン・フォームが第二言語文法習得に及ぼす効果を、インプット処理型フォーカス・オン・フォームの効果と比較しながら、より精密に分析する予定である。
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