平成15年度および平成16年度の日本学術振興会科学研究費補助金による研究として、フォーカス・オン・フォーム(focus on form)が英語運用能力伸長に与える効果に関する実証的研究を行った。本研究の第1段階では、教室第2言語習得研究(classroom second language acquisition research)の成果に基づき、テキストの要約を中心とした内容重視の言語活動の中に言語形式に学習者の注意を向けさせる処置を組み込んだフォーカス・オン・フォームを構築した。これは研究代表者が、「誘導要約法によるフォーカス・オン・フォーム」(focus on form through guided summarizing)と呼ぶものであり、先行研究においては一定の効果を言語形式習得にもたらすことが明らかにされている。本研究の第2段階として、誘導要約法によるフォーカス・オン・フォームが、日本人英語学習者の英語運用能力伸長にどのような効果を与えるか実証的に検証した。目標言語形式は現在完了受動態と補文標識if/whetherである。量的分析および質的分析の結果、誘導要約法によるフォーカス・オン・フォームは、特に目標言語形式の習得度が低い学習者に対して、当該言語形式の正確性(accuracy)を高め、英語運用の流暢性(fluency)および複雑性(complexity)を高めることに関して正の効果を持つことが明らかになった。誘導要約法によるフォーカス・オン・フォームに対する学習者の評価も分析され、そこから日本人英語学習者が要約を用いたアウトプット活動を効果的であると認めていることがわかった。
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