英語を母語とする子ども3名(3歳、8歳、11歳)の日本語獲得課程を、自然発話データの収集ならびに実験による理解・産出テストデータの収集を約1年にわたり縦断的に行いながら観察した。調査の対象となった3名は、2003年3月末より1年間日本に在住し、幼稚園ならびに小学校に通いながら、日本語を習得していった。従って、収集したデータは、自然的環境における第二言語としての日本語獲得過程(初期〜中期)である。 本研究では、日本語の文法発達、特に以下の3点に焦点を当てている。 (1)動詞と項構造(非能格自動詞、非対格自動詞、他動詞など) (2)格助詞(「が」「を」「に」など) (3)文法的形態素(自動詞化・他動詞化の「-are/-ase」、受身の「られ」など) 上記の自然発話データは、研究補助者をトレーニングしながら、CHILDESのCHATフォーマットで順次文字化している。さらに、自然発話データでは生じない統語構造や形態素などもあるため、実験データの分析も順次行いながら、(1)から(3)の獲得過程を探っている。 平成15年度は研究の初年度であったため、調査の基盤となるデータ収集が中心となった。次年度以降、文字化し音声をリンクしたデータファイルの作成と完成、また実験データの分析を完了させる。そして、既に収集済みの日本語を母語とする子どもの英語獲得過程の縦断的データファイルの作成も完了させ、両者を比較する予定である。言語類型的にも異なる日英語の獲得過程を比較・検討することにより、子どもの第2言語習得における文法発達過程に及ぼす第一言語の影響や普遍的要因を明らかにする。
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