研究概要 |
本年度は1年目として,先行研究の整理及び予備実験を行い,さらに本実験の準備と実験の一部を行った. まず,学習者と教師が語学の授業に必要であると考えているものを正確に把握するため,コンジョイント分析を用いてニーズ分析を行った.この分析法はマーケット調査の分野で利用されるようになっててきたものであり,学習者は聞き話すこと(音声)を,教師は聞くことと読むこと(インプット)を重視していることが明らかとなった. 発音練習では教師のモデル発音を学習者が真似る形式が基本であるが,教師の発音を聞きながら学習者が同時に発音をしている場面をマルチトラック録音し,その時間構成を詳しく調べると,学習者の発音のタイミングの微妙な「ずれ」に一定の規則性のようなものが発見された.また,例えば日本人が困難を覚えることの多いLとRの発音では,初級学習者に見られない第3フォルマントの上昇が上級学習者に見られた.このような音響的特徴は,発音指導法の有効性を定量的に検証することへの利用が考えられる. さらに,全ての刺激音をコンピュータにより合成し,日本語の促音音素の知覚実験を行うことにより,Time Order Errorと呼ばれる刺激提示順序により生じる誤差が音声知覚に影響を与えていることが実験により明らかとなった.また,ピッチを変化させた刺激音による実験ではTime Order Errorの効果が減少することも分かった. 以上のような本年度の実績を踏まえ,次年度は英語学習者の単語・文両方の発音練習に対象を絞り,更に詳しい実験を重ねる予定である.
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