研究概要 |
本研究では日本語を母語とする英語学習者の発音練習に関する調査・実験報告である.まず学習者のニーズを正しく把握することを目的として,マーケット分析で実績のある重回帰(コンジョイント)分析を行い,学習者は「聞き」「話す」音声言語を重視し,教授者は「読み」「聞く」インプットを重視することを明らかにした.続いて実験1では発音練習の際には音節数により学習者の反応開始までの時間が異なることが明らかとなった.録音教材を作成する際に設定する無音のポーズは0.5sでは短かすぎ,1sでは長すぎると言える.発音練習の代表的な型であるa-repeatとw-repeatにより再生された学習者の発音は,実験2の単語の練習ではあまり差がなかったが,実験3の英文での練習でa-repeatの方が,より母語話者の評価の高い発音となることが確認された.実験4では英文の持つ強勢リズムの再生成績を検討し,音声言語と非言語は異なる処理が行われている可能性を見いだした. w-repeatはモデル発音を聞きながら同時に自分の発音をフィードバックして聞く必要があり,情報の入出力が多い「忙しい」作業となるため,学習者は達成感あるいは「心地よい疲労」(いずれも著者の内観による)を感じやすい.そのため教師も学習者もw-repeatはa-repeatより有効であると錯覚してしまいがちである.しかしw-repeatは自己の発音を正しくモニターすることを妨げてしまう行為でもあり,より自然な発音を目指すための練習としては,特に韻律的特徴が重要な文レベルの練習には,必ずしも最良の練習方法とは言えないことが明らかにされた.
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