研究課題
本年度研究代表者が設立発起人の一人となっている日露戦争研究会の例会を7回にわたって開催し、日露戦争研究の活性化をはかるとともに、研究者の相互批判と啓発を通じて研究の深化につとめた。これらの成果の部は、土屋(研究代表者)の研究発表欄著書における発表、稲葉千晴(研究分担者)による雑誌論文発表欄記載の論文、研究発表の項には記載されないが、10月19日筑波大学で開催された日本国際政治学会、および12月13日・14日の松山大学における市民フォーラム「捕虜の町・国際市マツヤマ」における口頭発表(研究発表図書の項記載の共著著として近刊予定)のほか、稲野強・広野好彦・藤波潔(いずれも研究分担者)による『歴史読本』2004年49巻第4号における項目執筆、中山裕史(同)の日本女子大学学術交流シンポジウム「日露戦争前後の世界と日本」(2004年2月21日)における口頭報告、千葉功(同)の第15回日露戦争研究会例会(軍事史学会と共催、10月25日)における口頭報告となってあらわされた。以上の成果から明らかにされたのは、日露戦争が交戦両国だけでなく広く世界の様々な地域や国家にかかわった、ある意味での国際的戦争であったということ、また交戦両国の状況については、国民の戦争への動員と統合という点でかなりの差がみられたこと、などが明らかにされた。また戦後社会を通じて戦争の記憶を回収して、それを国民化していく様々な装置や、戦争の反省から「国民」形成への力学が生じるなど、戦争が両国の国民統合や国民形成に少なからず影響を与えていることが論じられた。今後は、こうした成果の上にたってそれぞれの研究をさらに精緻化し、研究目的である新たな日露戦争像を構築していく。
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