平成15年度は、日本の台湾、朝鮮における統治形態を念頭に置きながら、特に1898年より始まるアメリカによるフィリピンにおける植民地政策、いわゆる「友愛的同化」(Benevolent Assimilation)の内実を示す基礎文献・資料の収集・分析に時間を費やした。2003年7月31日より8月18日までアメリカ合衆国に出張し、調査・資料収集を行った。 8月1日から4日までは、ボストン・カレッジ助教授でハーバード大学ライシャワー研究所客員研究員Seraphim氏を訪ね、資料の所在などの教示を受け、またアメリカにおける研究動向なども議論し、今後の調査方法を検討した。 8月4日から17日まではワシントンに滞在、国立公文書館と議会国書館において調査を行った。国立公文書館では、米国陸軍省の植民地・属領関係担当の機関である島嶼局(The Bureau of Insular Affairs)の資料を渉猟した。特に台湾を植民地化し、日露戦争後には朝鮮半島を実効支配しする日本の植民地拡張に対する脅威(具体的には日本人によるフィリピンへの砂糖産業の参入・支配)を記したもの、あるいは日本の植民地行政との関係を示す資料を中心に収集した。 また議会図書館においては植民地統治の大統領諮問機関であり、行政に関する諸決定を行ったフィリピン行政委員会(Philippine Commission)の年次報告書や、関連文書の調査を行い、第二次行政委員会の委員長で、初代フィリピン総督に任命されるWilliam Taftの個人文書中、当該期の書翰を中心に収集した。 この間、ジョンズ・ホプキンス大学助教授Kramer氏と会談。長時間にわたりフィリピン植民地統治史の研究状況、資料の所在などの意見交換を行った。またアメリカ滞在中、基礎文献の購入もおこなった。 本出張以降、滞米中収集した資料、文献の分析を行っている。
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