戦国期から近世初頭にかけての津軽氏関連城館に関する文献を収集し、基本資料と絵図に関してはその作業をほぼ終え、整理の段階に入っている。本年度は、当研究の基幹となる「弘前并近郷之御絵図」(青森県立郷土館蔵)の写真撮影を終えた。現在、同絵図の翻刻作業を実施しており、これによって津軽平野中心部における戦国期城郭のアウトラインがほぼ把握できるものと期待している。 津軽氏関連城館の年代と機能を明確にする目的で、鯵ヶ沢町種里城跡・岩木町大浦城跡弘前市堀越城跡に関し出土陶磁器の再整理を行った。その結果、津軽(大浦)氏の本拠とした城館は、通説のように種里城→大浦城→堀越城と単純に推移するのではなく、文献資史料が示すように種里城が大浦城に先行するものの、大浦城築城後、直ちに本城が種里から大浦に移されるのではなく、両者が長い間併存していたことが明らかとなった。このことは、津軽(大浦)氏の地域支配基盤の形成過程を考える上で、注目に値する。
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