平安時代の書状の目録・全文データベースを作成するための基礎作業として、今年度は平安時代の書状については、「大御記裏文書」(京都大学総合博物館所蔵、勧修寺文書)と「虚空蔵念誦次第裏文書」(石山寺所蔵、校倉聖教十八函102号)の写真版を購入して整理した。書状の原本調査としては、写真版では明確に読みとれない部分を含む「大御記裏文書」について京都大学総合博物館で調査を行った。また、平安時代の書状に関する基礎的文献として、『高山寺本古往来・表白集』(高山寺資料叢書、東京大学出版会)、『古往来についての研究』(石川謙著、講談社)、『書簡作法の研究』(橘豊著、風間書房)、『寺院文化圏と古往来の研究』(三保サト子著、和泉書院)などを購入して、平安中期以降、貴族社会において書状がどのような場合に使用されたのかを往来物を分析することによって検討した。奈良時代の書状については、昨年度の調査などをもとにして、「手紙のやりとり」(『文字と古代日本』第4巻、吉川弘文館、平成17年度刊行予定)を執筆し、正倉院文書、木簡、万葉集における書状のあり方についてその特質を述べた。 唐の書儀・書状との比較研究については、平成16年7月26日〜28日に中国・昆明で開催された中国唐史学会第9回年会(唐宋社会変遷国際学術検討会)において、「唐代的書儀和古代日本的書簡」という題名で口頭報告を行い、書儀にみえる唐代の書状と正倉院文書や木簡、万葉集における古代日本の書状のあり方について比較を試みた。報告に際しては、現在中国における書儀研究の第一人者である趙和平氏や呉麗娯氏などから貴重な意見を賜ることができた。さらに公式令に規定された文書様式との関係については、科学研究費・基盤研究(B)(1)「中国法制文献の日本への伝来とその伝存状況に関する基礎的研究」研究会(代表・坂上康俊九州大学大学院教授、平成16年12月26日・27日、於九州大学)において口頭報告した。
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