本研究の調査研究活動を通じて、甲州財閥に関する学術的研究は大きく遅れていることが浮き彫りとなった。本年度は学術論文として「甲州財閥系企業の位置(その1)-電灯・電力、製紙、鉄道業界の場合-」と「甲州財閥系企業の位置(その2)-ビール、モスリン業界の場合-」を発表した。 前年度に引き続き甲州財閥の実態解明に焦点を絞った。具体的には過年度における調査活動で入手した関係資料類の検討し、日本資本主義の発展を背景にした産業界の再編成過程で、雨宮敬二郎や根津嘉一郎といった甲州財閥の構成メンバーの事業活動の実態の把握と、その特質の解明を課題とする次の論文を執筆した。しかし、これら論文は未発表稿である。雨宮敬二郎に関しては1)「甲州街道への経営参画」、2)「大日本軌道の成立と解体」の2本、根津嘉一郎に関しては3)「東武鉄道の再建と経営展開」、4)「ビール業界への進出と競争」の2本である。 解明すべき点も少なくないが、本研究を通じ甲州財閥の実態を解明できるデータは充分に入手した。これら論考は本年度までに発表してきた拙稿で構成される第一部「甲州財閥の内部構造」を受け、第二部「甲州財閥の事業展開」の主要部分を形作る。直、最終的には二部構成からなる『甲州財閥の研究』として取り纏めたいと考えている。
|