本研究では、歴史学の西山と建築史の藤田が共同で従来の成果を受け継ぎ、さらに考古学から研究協力者の参加を得て、平安京の居住形態と住宅建築を学際研究する。 平成15年度の前半には、平安京右京3条2坊16町(斎宮邸宅跡)の調査成果を一層深化させ、後半には、高陽院・冷泉院や右京6条1坊5町の発掘結果を分析の素材とし、さらに貴族住宅を解析する予定であった。そのため、代表者・分担者が中心となって研究会を準備・企画・開催し、報告や討論を通じて論点を深化させた。研究会は2回開催したが、幸い各々30名程度の専門家の参加を得て、多大な成果をあげた。第1回は斎宮邸宅跡を検討した。すなわち、平安前期の貴族住宅・寝殿造の既往研究を総括し、斎宮邸宅跡の特徴を分析した(分担者藤田)。さらに造園学の観点から、斎宮邸宅跡の園池や植栽の意味を把握し、日本史の立場から、親王・内親王の居住形態を詳細に考察した(協力者)。 第2回は第1回の論点を継承し、平安前期の貴族住宅を多様な視座から考察した。まず、長岡京左京2条3坊15町や平安京右京1条3坊9町・6条1坊5町の最新の調査成果を検討した(協力者)。また、平安京右京1条3坊9町の四脚門や、6条1坊5町の周辺の調査を文献から検討し、それぞれの遺構を意義づけた(代表者西山)。また、平安前期の邸宅を伝領の観点から把握し、摂関家の伝領される邸宅と、伝領されない邸宅を類別した(協力者)。 以上の通り、当初の計画はおおむね達成できた。積み残しの課題は、天皇・摂関家・公卿・下級貴族の居住形態の分析である。16年度には、平安京の住人の居住や住宅を、建築史・考古学・日本史の視角から町屋・小家などを取り上げ、検討する予定である。さらに、この過程で住宅や平安京の東西方向と南北方向の方向性が論点に浮上し、この問題を討論し研究を総括するつもりである。以上の諸報告は研究成果報告書に反映の予定である。
|