本研究は、アジア・太平洋戦争の末期に日本がおこなった中国人強制連行に関する歴史的研究を課題とするが、本年は、下記のような調査研究をすすめ、その成果をあげた。 1.本年度の研究実施計画の第一に、「緊急性を有する生存者・遺族の聞き取り調査」を掲げた。平成16年12月におこなった中国河北省、河南省における聞き取り調査の対象者が、平成17年10月に大阪を訪問したので、当時、藤永田造船所で労働した生存者から、当時の大阪における労働と居住の現場において、より詳細な聞き取りを実施した。また大阪築港、川口、安治川へ連行された中国人の遺族・家族から、戦後の家族の生活状況について、聞き取りをおこなった。 2.日本国内では、大阪市のほか、広島市、福岡市を訪問し、関係資料の収集と調査をすすめた。とくに広島では、被爆外国人について、新たな知見を得た。 3.厚生労働省を2回にわたって訪問し、昭和33年度から昭和44年度にかけて、当時の厚生省が地方自治体に要請しておこなった中国人死没者の遺骨調査に関する資料を、閲読・複写することができた。これは、相当な分量におよび、なお整理中であるが、今後、外務省関係資料ともつきあわせつつ、戦後日本における当該問題のありかたについて、さらに分析をすすめたい。 4.中国人強制連行の戦後に関わる諸問題を分析した論文、および戦後とはどういう問題であるのかを論じた論文を、それぞれ別の論文集に寄稿した。本年度の研究を通じて、中国人強制連行問題は、戦時中はもとより、戦後も問題として継続していることを再認識した。また本年度が最終年度にあたるので、研究成果報告書をまとめた。
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