研究課題/領域番号 |
15520404
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研究機関 | 比治山大学 |
研究代表者 |
頼 祺一 比治山大学, 現代文化学部, 教授 (50033494)
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研究分担者 |
中山 富広 広島大学, 大学院・教育学研究科, 助教授 (50198280)
鈴木 理恵 長崎大学, 教育学部, 助教授 (80216465)
引野 亨輔 福山大学, 人間文化学部, 講師 (90389065)
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キーワード | 神職 / 国学 / 本居 大平 / 近藤 芳樹 / 石見国 |
研究概要 |
2年目にあたる本年度は、各自の課題に基づく史料調査・分析と石見地方の合同調査及び研究報告会を実施した。井上家文書については、神官としての情報伝達の具体像を探るため、各年次の「万覚帳」「社方万集録」や書状の分析を行った。9月には頼・鈴木と研究協力者の六郷寛が石見方面の神職ネットワークの調査を実施し、とくに浜田市の藤井宗雄関係の著書・編纂物(市重文)の調査を行い、各地の神社等を回り、聞き取りをした。頼・引野は、国立公文書館・東京大学史料編纂所において、本居大平・近藤芳樹や神道関係の資料を収集した。これらの報告会と最終年度にむけての成果の取りまとめ方について協議するため、2月に研究会を開き、各自報告した。 本年度の成果としては、次の5点があげられる。(1)真宗優勢地帯においても近世後期には地域神職の自立はスムーズに行われ、地域住民への影響力は大きい。(2)安芸北部と石見国の神職間の交流は密なものがあり、書籍の貸借・筆写、国恩祭の情報連絡、近世後期から明治期に至る神楽の伝承など、神職ネットワークが情報網としての役割を果たしている。(3)玉田主計(永教)らの神道講釈の神職井上家への伝わり方をみると、「開かれた本」としての版本にたいし、「閉じられた本」としての写本という意義付けができ、蔵書の分析も所蔵者と地域住民との関わりで再検討を要する。(4)情報伝達の基礎となる人間関係とコミュニケーションの媒体として、これまでの史料に加えて「香典帳」なども貴重な史料となる。(5)本居大平門の後藤夷臣や近藤芳樹らの活動は、まず和歌の指導・普及にはじまり、そこから日本の伝統や天皇への関心を生み出していく。一方で歌枕や遺跡・遺物への関心が地域への視点も広めていく。
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