1582年の「天正遣欧少年使節」の派遣は、ポルトガル、スペイン、イタリアの王侯貴族に謁見させることにより、16世紀ヨーロッパの繁栄ぶりを日本人に知らしめ、日本人自らがキリスト王国の素晴らしさを日本人に語らせ、キリスト教の布教効果を高めようとした他に、出発前に設置した西洋式教育機関であるセミナリオ(小神学校)での学習の効率をあげるために、教科書や辞書類を活版印刷する目的で、グーテンベルクの印刷機を持ち帰ることとその印刷術を学ばせることも目的として企画されたものである。実際に1590年に持ち帰った印刷機で、今日50余種の、いわゆるキリシタン本が印刷され残されていることが確認されているが、その中に、楽譜、すなわちこの当時の楽譜であるネウマ譜で19曲のグレゴリオ聖歌が印刷されている『サカラメンタ提要』という典礼書が、現在日本に2冊存在している。今年度の研究では、以下の内容を、調査・検証した。 (1)19曲のグレゴリオ聖歌の特徴を明らかにした。 (2)19曲のグレゴリオ聖歌のネウマ譜を、現代の五線譜に書き直した。 (3)印刷方法と手順を、当時のヨーロッパで印刷された楽譜と比較した。 (4)19曲のグレゴリオ聖歌のいくつかを、竹井が主催する大分中世音楽研究会のメンバーを使って、演奏会で披露した。 (5)上記内容を研究する中で、最初の曲の印刷ではミスと思われる箇所が判明した。
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