本研究課題は「平成15年度科学研究費補助金の交付の内定について」で不採択となり、年度の3分の2を過ぎた11月に入って追加採択されたものである。したがって、研究実績として公表するに足るだけの成果は出せていないのが現状である。しかしながら、来年度以降の本格的な研究に備えての準備段階として、研究環境の整備などを積極的に行うことができた。まず中国の研究者による敦煌写本書儀研究について、その現状と課題とを整理した。敦煌写本書儀については、すでに多くの写本が校訂されて翻刻出版されており、新しい撮影技術による写真版の出版も継続的に行われ、IDP(INTERNATIONAL DUNHUANG PROJECT)により、英国所蔵の敦煌文献はインターネットでその鮮明な写真が公開されるにいたっている。こうしたなか、いくつかの主要な書儀文献を選んで、より精度の高い校訂を施し、その上で書儀そのものの分析を行う必要があることを再認識した。設備備品費によって、これまで十分な考察がなされていなかったロシアに所蔵されている敦煌文献の写真版(『俄蔵敦煌吐魯番文献集成』)を購入するとともに、研究補助者の協力によって、活字化された敦煌事儀と写真版とを蒐集・整理し、誤植や校訂の誤りなどのチェックを始めたところである。また九州大学の坂上康俊氏を代表とする科学研究費基盤研究(B)「中国法制文献の日本への伝来とその伝存状況に関する基礎的研究」の研究分担者として、中国の宋代法制史研究者戴建国氏を招いての研究会において、仮寧令に関する報告を行ったが、これは書儀に引用された法制史料の分析の成果であり、この研究会に来年度は中国の書儀研究の第一人者である趙和平氏を招待するよう計画中である。日本古代の文献資料の中から、書儀の影響を拾い集める作業については、今年度は時間不足でできなかったが、研究補助者の協力により、来年度行いたいと思っている。
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