研究概要 |
平成15年(2003)年度前期は,著書『律令国家仏教の研究』を纏め,これ迄の研究を整理・総括した。平成15年度後半期より同16年度前半期は,英国・ケンブリッジ大学のリチャード・バウリング教授,ロンドン大学SOASのジョーン・ブリーン博士(Senior Lecturer),同じくルチア・ドルチェ博士(Lecturer)らの協力を得て,同国のケルトに関する古伝承・説話に見られる神格と,新宗教たるキリスト教との融合の実態等について研究を進めた.当該の古伝承・説話には,他界観,自然の神格化,政治的・軍事的事件の神話化等に,『古事記』や『日本書紀』等の神話・説話と共通する要素の存在することが認められ,とりわけ他界観については,日本のみならず,中国の桃源郷観念など,古代東アジアのそれとも類似した性格を有することが確認された。平成16年度後半期もこの研究を継続し,英国,アイルランド及びフランスのケルト文化地域における関係資料の収集と共に,分析と意味付け,さらに他域の同類の神話・説話との比較を進めた。また,日本での異宗教間の交渉の例に関する研究と,ケルトの宗教に関する先行研究を整理し,日本での研究論文のレファレンスを作成し,自らの論考と併せて,報告書作成に向けての作業を進めた。
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