研究概要 |
神道の本所(家元)である吉田家の家政の基本的な史料である「御広間雑記」のデータベース化について、本年度は、主にデジタル化の方法について検討し、さらに入力項目や入力画面の作成を中心におこなった。マイクロフィルムからのデジタル化について、所蔵者の天理図書館とデジタル変換の業者と打ち合わせの上、画質・データ量・費用の件から多面的に検討し、納得できるコストと画質を確保できた。それにより、当初見込んでいたものより多く、本年度14,000コマをデジタルデータへ変換できた。 入力項目について、基本的なデータ属性以外に、神社名・地域名(国・郡・村)などのインデックスを付す項月選定を行い、入力画面の作成を行った。入力画面の適正化に時間がかかり、項目の入力作業ははかどらなかった。 在地の神社史料と本所史料との突合せという点については、十分ではなかったが、研究代表者の幡鎌は京都府宮津市にある山王社の神主日記を分析し、近世後期の神社の動向を藩政史の中に位置づけて分析し、その一部分を日本宗教文化史学会で報告し、「日本宗教文化史研究」で公刊するに至った。 在地神職が由緒を作り上げるプロセスで、一見単純な登録台帳のように見える本所の史料記述が、必ずしも事実を伝えていないということが明らかになってきた。今後中立的客観的な史料としてではなく、偽文書に正統性を与え、争論のために作られた偽文書の一つとして家元史料を検討するという観点を取り入れることが重要になってくる。
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