研究概要 |
本研究の目的は、1、近世における神道の執奏家吉田家の日誌である「御広間雑記」にインデックスを付して利用の便を図り、神道研究を促進する。そのため、基本フォーマットを作成し、データを蓄積すること。2、吉田家に対抗する白川家や在地の神職の動向・思想をあわせて検討すること、の二つである。 1については、マイクロフィルムからのデジタル変換の仕様を決定し、「御広間雑記」全体の約15%、24,000コマをデジタルに変換した。引き続き、入力フォーマットを作成し、項目を入力していった。地名および神社名、コマ番号、年月日を付すという単純なものとしたが、かなりの時間を要する作業となった。作成したインデックス数は100冊分約11,000である。この限りではかなりの成果を得た。しかし、頻出する人物については、神社名が省略されることが多く、人名を入れないと動向を把握しきれない嫌いがあり、人名を追記した。これにより倍以上のデータ量・作業量となり、今回では予定していたほど、人名を追記しきれなかった。デジタルデータとのリンクとあわせ、今後の作業を俟ちたい。 2については、近世後期に吉田家に対抗していた白川家の史料を検討し、吉田家史料との対比を試みた。史料の残存状況も異なるが、近世後期に展開した白川家が、幅広い民衆を対象とした活動を展開していたことが明らかになった。また、垂加神道や国学者との色濃い関係も検討することができた。神道が藩の政策に密接に関係していることを、宮津藩の事例を通して明らかにした。 インデックス作成作業は、一定度の蓄積を得て初めて利用の意味があり、今回の作業だけではおそらく不十分である。長期的に継続して作業を続けていかなければならない。
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