本研究は、清朝を含む中国官印制度研究文献の調査収集、官印(印影)の収集・整理、そして比較分析研究の3段階からなる。本年度は関係研究文献の調査収集、国内諸機関所蔵の文書中の官印(印影)の調査収集を行った。 (l)清朝を含む中国官印制度に関する研究論著の調査・収集を行った。近年、多くの関係論著が公表されている。そのなかでも葉其峰『古璽印通論』(紫禁城出版社、2003年)はこれまで官印制度・印影を網羅的に収録するとともに、はじめて中国官印制度を通観した研究である。これらを用いて「中国官印制度史」の概要を作成することができた。しかし、清朝の官印制度については、日本(片岡1999)の研究を越える分析はない。 (2)清朝の官印について、関係研究機関の所蔵する中国文書において史料調査と収集を行い、成果を得た。具体的には、東京大学東洋文化研究所所蔵の北京関係文書群「北京文書」五百余件と、仁井田陞博士旧蔵の「仁井田文書」二百余件について、そこに押印されている清朝官印を調査し、鮮明な印影をデジタルカメラに収めた。その中には、満漢合壁の八旗関係官印が含まれている。満洲八旗と密接な関係を有する北京税関官庁の官印(『左翼管税関防』、『右翼管税関防』)はこれまで確認されていない官印で、これまでその使用例をみることがなかっただけに、清朝官印の拡がりを知らせるとともに、従来の研究の再検討と一層深化を迫る発見である。また、広島大学附属図書館所蔵の浦廉一氏蔵書を収めた「浦文庫」中の清朝文書中の官印を写真複写した。収集した官印の詳細な分析は次年度に行う。
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