研究課題
本年度も前年に引き続き以下の研究を遂行した。1.西暦7-9世紀、東部アフガニスタン方面においてイスラーム化を受容した側である非ムスリム社会の様相についての研究を継続した。特に前年度の研究において明らかにしたハラジュ=テュルク族の存在を梃子に、1970年代にイタリア考古学調査隊によって初期調査が行われたガズニ西南のカラバーグ=ジャーグリー地域に散在する石窟群の研究において、実際の調査にあたったナポリ国立東洋大学教授ジョヴァンニ・ヴェラルディ氏と共同研究を行って、その性格と年代の概略を解明する事に成功した。その結果、このテュルク系部族がヒンドゥークシュ山脈北側から、中央アフガン山塊北・東部にかけて散在していたことが明らかになったが、これはバーミヤーン仏教遺跡の造営年代の再評価の動きの中で美術史、考古学の分野から注目を集めている。その後はバーミヤーン西方の従来未踏査であった地域で新たに発見された仏教寺院址とバクトリア語碑文について情報収集と研究を継続し、イスラーム化前夜のアフガニスタン史の中にこれを位置づける試みを継続した。また、中央アジア方面のイスラーム化前夜の状況については、放送大学印刷教材『中央アジアの歴史・社会・文化』の中に、二章を執筆し、その概略を述べた。2.一方インド洋海域については、前年の調査を継続すべく、2005年2月にスリランカにおける現地調査を予定していたが、2004年暮れのスマトラ沖大地震とそれに伴う津波被害により、前年調査した地域全てが被災し、関係者との連絡が途絶してしまったため、本年度の現地調査を断念せざるを得なかった。しかし、インド洋海域の初期イスラーム社会のあり方についての研究は継続しており、一次、二次文献の精読・精査を通じて内陸地域との比較対象のための材料を蓄積した。
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Buddhist Caves of Jaghuri and Qarabagh-e Ghazni, Afghanistan
ページ: 105-108