本研究は、20世紀という歴史変動期における中国知識人集団の思想と行動を、胡適新文化集団という個別事例を通じて明らかにする試みである。その際、1917〜51年、1951〜78年、1978年〜現在、という3つの時代区分を設け、それぞれの時代における胡適新文化集団の思想と行動に関する分析によって、3時代の知識人集団の共通点と相違点を明らかにすることに重点を置く。 第1年度は、胡適新文化集団そのものの理解を深めるための基礎作りを目指して、基礎的なデータベースを試みた。 第2年度(最終年)は、胡適新文化集団そのものの実態究明を目指した第1年目の成果の上に、胡適新文化集団の3時代における社会的・文化的・思想的役割に関する総括を行うことができた。その主な成果は以下の通りである。 1 20世紀中国における知識人の思想 胡適の中国思想史とアメリカ・プラグマティズムとの相関関係について、1910年代から胡適の最晩年の60年代までを通観し、その受容・発展・普及の実態を明らかにした。 2 胡適新文化集団の研究 胡適新文化集団が目指した近代的教育制度について、主に歴史的観点よりする分析を行った。 3 胡適新文化集団と現代中国 胡適に提唱した自由主義の、現代中国における受容・反発・再提起の過程を研究した。特に改革開放期後半の1990年代以後における展開を重視した。 以上の研究により、胡適新文化集団の20世紀中国における思想的・文化的・社会的な位置付けがより明確になったと考える。
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