中華総商会関係資料の収集と分析を進めた。 日本国内に関しては、神戸中華総商会付設神戸華僑歴史博物館のリニューアルオープン(2003年4月)にあわせ、かねてより集積されていた故陳徳仁総商会長の史料整理が進み、その全貌が明らかになった。報告者は陳文庫の保存をご遺族から委嘱された1999年時より資料整理作業に関わってきた。『社団法人神戸中華総商会報』(1970年代に発行。欠号あり)等の機関報、『神戸中華商務総会章程』(1909年)や中国国民党駐神戸直属支部『国慶特刊』(1948年)等、神戸華僑社会及び中華総商会の分析にとり貴重かつ希少価値をもつ史料が発掘された。整理された会内資料や寄贈図書、写真類から、戦後の神戸中華総商会の会務と他の中華総商会との交流の実態がみえてくる。また、北幇所属の華僑に対する聞き取り調査を進め、研究の空白部分を回想などで埋める努力を継続している。神阪華僑に関しいっそうの総合的分析を進める予定である。 また、外交資料館保存文書と『神戸又新日報』の記事等を手がかりに、第二辰丸事件(1908年)と直後に起こった第一回日貨ボイコット運動の分析を進めた。ボイコット運動における広東自治会と各同業組織及び傘下の商店、神戸華商と神戸広業公所等それぞれが担った機能と相互関連を明らかにした。 一方、海外に関しては、当初サーズの流行が心配されたため本年度の海外調査を断念していたが、夏に沈静に向かったため、国際シンポジウムへの出席を兼ねてシンガポールにて史料収集を行った。シンガポール中華総商会資料室と国立公文書館で予備調査を行い、シンガポール国立大学にてシンガポール及びマラヤ地区の中華総商会関係史料と英文による関連研究論文を収集複写した。本研究の主要な柱の一つである20-30年代のシンガポール及びマラヤ地区華商のナショナリズム分析の基礎資料となる、中華総商会主催の国産品展覧会に関する資料を発掘することができた。
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