平成17年度中、以下のように研究活動を行なった。 1、国内では、京都大学付属図書館・京都大学文学部図書館・京都大学人文科学研究所付属漢字情報研究センターに赴き、捐納関係の資料を調査収集した。 2、海外では中華人民共和国の国家図書館・北京大学図書館・中国科学院情報文献センター(以上は北京市)・南京図書館・南京大学図書館(以上は南京市)・甘粛省図書館(蘭州市)・青海省図書館(西寧市)などに赴き、捐納関係の資料を調査収集し、現地の研究者との意見交換をした。なお、私費で天津図書館と南開大学図書館(以上は天津市)に赴き、捐納関係資料の調査収集をした。 3、中国国家図書館において、「日本の大学における中国史教育について」を題に講演を行なった。 4、昨年度までの調査収集から得た資料をもとに、1889年に中国の浙江省で災害救助の資金調達のために実施された捐納(「賑捐」)の捐納者リストをデータベース化し、分析を行なった。 5、捐納の社会影響と社会的役割について、1889年の浙江水害を例に、まず賑捐が実施する制度的背景を研究した。前近代、とりわけ清朝国家の財政制度では、年間支出の80%以上が皇族や官僚俸禄、および兵餉などであり、自然災害などに対応するものはほとんどなかった。このような背景のなかで、国家は、自然災害への救助に対し、賦税の減免や救済金の支出などの措置を講じていたが、被害の規模からすれば、場合によっては、通常財政範囲内では対応しきれないことも多かった。そこで、政府は、救済資金を調達するために、中央戸部や地方において、賑捐を実施することにした。1889年の場合は、賑捐に際して、国家が国立学校の学生資格(「貢監」)・栄典(「封典」)・名誉的なポスト(「虚銜」)などを売り出した。
|