研究課題
昨年度のリーズ国際学会で報告し、国際的研究者と討論・交流を重ねた結果、さらに贖宥状に関するケーススタディーを積み重ねることが必要であると判断し、今年度は英国国立公文書館所蔵の贖宥所史料を中心に調査・分析を行った。第一に、サファクのジェントリであるラングレィ家が受給した10通の贖宥状をもとにケーススタディを行った。受給者であるラングレィ家のfamily historyと受給の状況を関連させて分析し、受給者のとりわけ宗教的意図の解析を試みた。受給にとりわけ熱心であったキャサリン・ラングレィが、未亡人となったのち、国王ヘンリ8世の母であったマーガレット・ボーフォートとの関係を通じて、現世立誓女性となり、その宗教社会的サークルを頼みにし、死の際もその宗教社会的ネットワークを有効に利用したことが明らかとなった。このように、贖宥状を受給した側の宗教社会心性を探るための事実を明らかにし得たことが今年度の最大の成果である。第二に、贖宥状に見る宗教社会的ネットワークに関する上記のケーススタディにもとづき、国際中世学会議2004(リーズ大学、2004年7月)での口頭報告を行い(司会、ケンブリッジ大学前教授、ヨーク大学中世学センター、バリー・ドブソン氏)、意見交換につとめた。また会議の前後に、ラングレィ家の関連史料調査を英国国立公文書館で行った。第三に、以上の成果の一部を、平成16年度研究成果公開促進費を得て、著書『ジェントリから見た中世後期イギリス社会』(刀水書房、2005年)にまとめた。
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The International Medieval Congress, Univ.of Leeds,13 July,2004.