今年度の実績としては、まずブルボネ地方の農村史および農民作家エミール・ギヨマンの作品、社会・文化活動に関する文献資料をリストアップし、二次文献の大半を入手し終えたことがあげられる。一次史料についても、滞仏調査において、アリエ県古文書館を中心にギヨマン関係文書を収集し、国立古文書館では農業省文書を閲覧してブルボネ地方の農業組合運動に関する調査を行った。 これらの調査に際して、ツールーズ第2大学R・ペッシュ教授やアリエ県古文書館、そしてギヨマンの息子ジャン・ギヨマン氏らの全面的な協力を得ることができた。研究成果として発表できたものは、今のところ「地域に生きること-D.アレヴィー『中部地方の農民を訪ねて』(1935年)にみる農村世界-」(『福祉文化』第3号、2004年2月)だけであるが、平成16年度に発表予定の論文2本を現在準備中である。ひとつは、20世紀初頭におけるブルボネ地方農民組合の組織化が当時の農村の文化変容とどのようにかかわっていたかを論じる。別の論文では、エミール・ギヨマンの文化的・社会的な活動を通して、地域社会における教育の意味を考察しようとするものである。両者ともに、当時叢生していたさまざまな団体の意義、ギヨマンを中心に形成された文通網によるコミュニケーションの意義を積極的に評価することになる。 なお、本研究の副次的な目的の一つとしていたモーリス・アギュロン『村の共和政』の翻訳については現在作業を保留している。長期的時間のなかで社会的結合関係の変遷を考えるには、先に、アンシャン・レジーム期の信心会confrerieの実態をおおよそ把握しておく必要が生じたからである。現在これについても文献調査を進めている。
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