研究概要 |
今年度はとくに、ブルボネ地方の農村社会におけるソシアビリテ(社会的結合関係)の変革と多様化が第一次世界大戦後の時代にどのように展開するかについて調査し、また、両大戦間期の日仏の農民組合運動の特徴を把握しようとした。 まず前者については、大戦後もエミール・ギヨマンを中心とする手紙と農民運動のソシアビリテが存続したこと、モンリュソン郡のブドウ栽培農ジュール・ルジュロンが組織した「モンリュソン農業組合連盟」が中心的な運動の担い手になったこと、さらに、農民の政治化もいっそう進展し、共産党への支持が広がるが、選挙政治の次元にとどまり、農村社会の変革は依然としてローカルな組合運動によって担われたことが明らかになった。しかしこれら諸点を関連づけて、地域的、時代的特徴を抽出することは、課題として残された。 後者については、両大戦間期の小作争議と農民自治運動に関する文献調査を進め、E・ギヨマンの翻訳者、犬田卯の文筆活動とその背景にある農民文化の変容と政治意識の覚醒について考察した。その成果の一端は、2007年6月の中国四国歴史学地理学協会大会において発表し、論文としても公刊する予定である。これは、本研究課題から派生した新たなテーマであるが、今後、日仏比較農村社会史として発展させようと考えている。 なお、J.-L.Marais, Historie du don en France(フランスにおける寄附の歴史)の書評論文を発表し、寄附の歴史を通してフランス人の心性や結合関係がどのように変化したのかを考察したこと、2005年度のわが国におけるフランス現代史学界の動向を整理、展望した論考を発表したことも付言しておく。
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