研究概要 |
申請者が研究の目的として設定したところは,これまでの社会史的大学史研究の成果を踏まえ,大学で教育を受けた者が,特定の社会階層のなかで果たした役割の実態を明らかにするところにあり,具体的は研究対象を12世紀末〜15世紀の高位聖職者(とりわけ司教)に設定した。 平成15年度の研究においては,アミアン,ルーアン,ラシス,ブザンソン,アジャン,ロデスの6司教区を対象として,当該司教区の司教の座にあった人物と大学教育との関連性を明らかにする作業を行った。 有力な司教区アミアンと「弱小」司教区ロデスの検討結果を例示しよう。アミアンでは1167年〜1501年に24名の司教が登場するが,その内14名が大学教育を受けている。13世紀には9名中4名,14世紀には6名中4名,15世紀には11名中6名が大学で学んでいる。とりわけ,1326年〜1436年にかけて司教座にあった9名の司教は全員大学で学んでいる。 一方ロデス司教区では1167年〜1501年にかけて22名の人物が司教座に登り,その内大学で学んだ者は9名である。大学教育を受けた司教は13世紀には登場せず,最初に登場するのは1319年である。しかし,14世紀,15世紀に司教座に登った14名の内の9名は大学で学んでいる。 これらから,大学教育を受けた人物が13世紀に司教座に登るという現象には地域による差がある。だが,14世紀以降,地域に関係なく大学で学んだ者がの司教の中に占める割合が増加することを指摘し得る。 この傾向は,概ね他の司教区についても当てはまるのである。
|