研究概要 |
本研究の目的は,ヨーロッパ中世の大学で教育を受けた者が,特定の社会階層のなかで果たした役割の実態を明らかにするところにあり,具体的は研究対象を高位聖職者(とりわけ司教)に設定した。 平成16年度の研究においては,アミアン,ルーアン,ランス,ブザンソン,アジャン,ロデス,マンドの7司教区を対象として,1201年から1500年までの期間,当該司教区の司教の座にあった人物と大学教育との関連性を明らかにする作業を行った。その結果,以下の研究成果が得られた。 (1)当該期間に司教職に就いた者183名中76名,41.5%が大学教育を受けていること。 (2)1361年以降,大学教育を受けた司教が激増していること。すなわち,1201年〜1360年に司教となった95名の内大学教育を受けた司教は21名,22.1%であるのに対し,1261年〜1500年についてみると,88名の司教のうち55名が大学教育を経験しており,その割合は62.5%に登り,とりわけ1361年〜1460年については69名中48名と,その割合は69.6%の高率を示している。 (3)司教座に登った者のうち84名について大学で受けた専門教育が判明したが,教会法28名,市民法29名,両法(in utroque jure)12名,神学8名,医学1名,自由学芸1名,不明5名で,法学の圧倒的優位が明らかである。 (4)勉学先として選んだ大学に関して言えば,パリ(22名),オルレアン(12名),トゥルーズ(5名),アンジェ(3名),アヴィニョン(3名),ボローニャ(2名),モンペリエ(1名)の7大学で,将来の司教が学んだ大学としては,パリ大学が他の大学を大きく引き離している。
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