本年度の課題は、主として、直営地耕地と土地支給を主とした土地関係に関する事項を検討することであった。 まず、ウンマの直営地には在地のウンマの神でなくウルの王権と深く結びつくグラ神の耕地が含まれていること、その事実は指摘できた。ただし、その意味するところは、ウル第三王朝時代の耕地経営を集中的に研究する京都大学人文科学研究所教授前川和也氏と何度か検討するも、結論に達しなかった。さらに、ラガシュにおいて直営地収穫大麦の5割がバルとして支出されることは約30年前に前川氏が指摘したところであるが、ウンマにおいては同様の支出あると思われるものの、ラガシュ同様に5割であったかについても結論が出せない。ただし、このバルが欧米の研究者が想定するような都市支配者の輪番義務たるバルとは異なることは確証できる。 土地支給については、初期王朝時代における家産体制を支える有力な柱が所属員への土地支給であったが、ウル第三王朝時代にそれがどのように変化したのかが研究の要となっているが、本年度では、とりわけウンマの直営地からシャギナを長とする王直属の軍団への土地支給を問題にした。これも史料が少なく、ウンマの支配者からは個々の兵士でなく軍団全体へ一括して支給されることは明らかであるが、その全体像は未だ解明に到っていない。 最後に、行政経済文書のコンピュータ処理について、実務を予定した者が都合で出来ず、予算を組んだ謝金は使えなかった。したがって、期待したほどにははかどらなかった。
|