1.近世・近代のフランスの新聞・雑誌などの定期刊行物について、京都大学、金沢大学などにおいて資料調査を行った。さらに、フランスをはじめとする諸外国から近年の研究動向に関連する研究文献の発注と入手に努めた。2.1750年代に焦点を当て、当時の王権と高等法院の対立を軸に、七年戦争とジャーナリズム、外務大臣ショワズールの外交政策、フランス国内紙と外国紙、王権とジャーナリズムの相関関係の解明に努めた。3.ルイ16世即位以後のフランスにおけるジャーナリズムの状況について、特に1780年代の外務大臣ヴェルジェンヌの時代における、当時の新聞やジャーナリズムの状況について分析をすすめた。「ジュルナル・ポリティーク」をキー概念とする『メルキュール』誌と、同時期の『ガゼット』紙の記事の比較的な検討を、ほぼ2年間にわたって詳細に行い、「ジュルナル・ポリティーク」と「ガゼット」概念に基づくそれぞれの政治報道の内容や性格を吟味した。この時期のジャーナリズムがジャーナリズムの理念にどの程度合致するものであるかどうか、革命期のそれとの連続性、断絶性についての論議を展開した。4.「世論」、「公共空間」の問題を理論的、理念的に進めると共に、実証的な見地から17、18世紀のフランス史の政治史的な流れの中でこの検証が可能かどうかの分析を進めた。J・ハーバーマスや近年のK・ベイカーの議論をふまえて、こうした研究視角の可能性や有効性について検討を加えた。2003年度広島史学大会シンポジウム(10月25日.於:広島大学)「近世の出版の社会史」において「近世フランスにおける新聞出版とジャーナリズム」と題する基調報告を行った。
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