近世フランスの政治情報とジャーナリズムに関して、特に新聞出版の文化に焦点をあてながら、この時期のジャーナリズム形成の問題を3年にわたって、さまざまな角度から検討した。とくにこのような新聞出版の文化と王権や政治機構との関係、また、読者公衆や公共圏・世論など近年注目されている諸問題についても検討した。国内の大学での史料調査およびフランスでの文献調査、さらにフランスをはじめとする外国から近年の研究動向に関する文献の収集に努めた。特に本研究成果報告論文としては、 1.フランス近世における、「レピュブリック」理念の問題を論じた。「国家」という一般的な意味から、近代的な「共和政」という意味に転化してゆく過程を論じ、さらに当時の「文芸共和国」という理念の持つ意味を検討し、新聞・雑誌などジャーナリズムの果たした側面を検討した。 2.フランス近世における、「教育」の問題を論じた。識字能力、初等教育から中等教育にいたる当時の教育の実態を、ルソーの教育思想、プチト・エコル、コレージュ改革の問題と関連させて論じた。さらに、これらの改革が、革命期の教育改革といかに関わってゆくかを検討した。とくにジャーナリズムとの関連で論ずることはできなかったが、教育思想の伝播に、ジャーナリズムは大きな役割を果たしており、この点が次の研究課題となった。 3.1631年にテオフラスト・ルノドーにより創刊されたフランス最初の新聞『ガゼット』Gazette紙の出版文化を分析の対象とし、創刊時からフランス革命前夜にいたるまでの時期を通史的に捉えた。この「ガゼット」から18世紀後半における「ジュルナル・ポリティーク」への政治情報の転換がいかなる意味や意義を有するのかを論じた。
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