研究課題
基盤研究(C)
ポストモダニズムや言語論的転回、ジェンダースタディーズなど昨今の知的世界におけるパラダイムの転換は、ギリシア・ローマ世界の捉え方にも大きな修正を迫っている。本研究において、これらの動きを受けて改めて「古代ギリシァ人とはいかなる人々であったのか」という問題を、その世界が歴史的な意義を有する理由の一つとして必ずあげられる彼らのコミュニティ、すなわちポリス(polis)と呼ばれたものに注目して、ギリシア人がポリスにいかに関わっていったのかという点からギリシア世界の特性を探ることを、とりわけギリシア人がそのアイデンティティを感じる集団とはいかなるものであったのかを再度検証することを中心的なテーマに据えてみることにより試みた。そこでまず問題となったのが史料の問題である。従来の実証的な研究のアプローチの有する欠陥が指摘されて久しいが、これらの指摘を承けてギリシアイメージに関する史料を再検討すると、一般的に抱かれているギリシア像はローマ期に創造された面が強いことが明らかになる。そこで本研究でもローマ帝国下において、ギリシア人が抱いた自らのアイデンティティや歴史認識を考察対象とした。その結果、彼らが考えたギリシアらしさと、ローマ進出以前のギリシアらしさがコミュニティのあり方としては異なる状況に注目し、従来衰退期と見なされてあまり考慮されないヘレニズム期も視野に入れ、アルカイック期からローマ期までを通時的に見ることで、彼ら自身が認識するギリシアらしさ変容から、改めてギリシアらしさとは何かの解明を進めた。そして彼らがアイデンティティを抱くコミュニティは状況に応じて可変的であり、近代的な国家の観点から認識することがいかに危険であるかを理解するに至った。そして彼らが何を媒介としてコミュニティの一員としての意識を持つのかという問題について、宗教的な祭儀や聖地が重要な役割を果たしたことを明らかにした。
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KODAI 13
新カトリック大事典(研究社)
KODAI Vol. 13, (Forthcoming)
New Encyclopedia of Catholicism, Kenkyu-sha, Forthcoming.