今年度の研究重点は、4年間の継続課題の初年度として、機材の研究整備、観察方法と記録のシステムを含む実験内容の検討、本研究課題が引き継ぐ従来の当研究室データとの整合性の検討などに置き、また本研究課題が含まれる分野「石器の使用痕分析」の、国内における連絡研究組織である「石器使用痕研究会」に参加連携し方法論の検討などを行った。本研究課題での主要備品である、石器観察用顕微鏡の仕様細目と部品組合わせについて、従来「東北大学使用痕研究チーム」が開発・蓄積してきた資料と分析法の観点から研究した。頁岩、チャートを主に複製石器と写真像データを活用する互換性を確認した。使用痕摩耗光沢の映像と線状痕の検出を検討した。視野の広範囲度、対物レンズ長作動距離、長形石器刃部観察に本体カサ上げ、微細剥離面内部観察に自在傾斜ステージなど、旧石器の刃部観察の最適システムを研究し、設置した。機材一式が高価のため、配分予算の関係上、複数の観察者が同一の特定部分を観察検討する設備と記録デジタル化を2年度に分割することとした。また摩耗光沢の記録、分類と基準の標準化には35ミリスライドが最適と認められてきたが、今回検討会での討議により、デジタル映像は使用痕研究会全体の現水準を反映できるレベルと確認された。実験記録の方法、同定基準標準化、基準資料の共有化など、使用痕研究の方法全般にわたる討議で、今後の共同研究レベルの確認を進めた。
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