この研究では、明治時代に試みられた窯業製品の分類の背景、および古代の土器・陶器の製作過程における、人為的な材料の選択と素地の加工に関する調査を重点的に実施した。 (1)日本の窯業製品の分類については、19世紀中頃にヨーロッパで開始された分類案の中から、明治時代末に採用された、フランスのエミール・ブーリー(E.Bottrry)の研究を、1901年〜1926年の間の文献から検討した結果、合理的な内容とともにいくつかの問題点が明らかになった。 (2)材料の選択については、混和材の添加に関していくつかの事例が明らかになり、長野県川原田遺跡の縄文土器には、混和材の種類が土器型式と密接に関係するものがあること、神戸市西求女塚古墳の土師器について、大型の壼や甕と小型の器台との問において含有率の差があることが明らかになった。これは成形の技術と使用時の機能に深く関係した、材料の選択と加工の痕跡を示していることが明らかになった。 (3)素地の加工の課題に関しては、加熱と窯業製品の固結のあいだには素地の精緻さや鉄の含有率などが関係することについて、いくつかの資料収集と調査をおこなった。その一つが、G.クチンスキーが明らかにした焼結温度と材質との関係で、その技術が応用されたギリシャの黒絵・赤絵、中国の白陶などの、焼結と発色に関する焼成技術を検討した。 また、材料を水簸する技術が日本で導入されたのは、陶器の生産開始の直後からであることを鉄の含有率の調査から明らかにしたほか、中国の黒陶の黒い発色と炭素の関係を、EPMAによる分析から明らかにした。
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