本年度も、これまでの2年間と同様、2つの主題を設定して研究を進めた。 第1は、京都大学考古学研究室に所蔵されている、朝鮮古蹟調査事業関連資料の整理および検討作業である。本年度は、1918年に浜田耕作・梅原末治がおこなった星州・高霊・昌寧地方の古墳調査についての歴史的意義の検討を進めた。まず、京都大学考古学研究室所蔵資料と、東洋文庫所蔵の梅原末治の野張および報告書、浜田・梅原の回顧録をつきあわせて、報告書の作成過程を具体的に復元する作業をおこなった。また、同時期の日本における考古学的調査技術との比較研究を進め、20世紀前半の東アジアにおける考古学調査研究史における歴史的意義について考察をおこなった。こうした研究の成果については、2006年1月に大阪で開催された世界考古学会議などで口頭発表をおこなった。 第2は、1930年代における釜山考古会の活動に関わる研究である。今年度は、大韓民国釜山広域市立市民図書館に所蔵されている、釜山日報のマイクロフィルムのうち、1935年から1938年までを閲覧し、関連記事を検索した。本年度の調査により、釜山における博物館建設運動および釜山考古会5周年記念展覧会に関連する、新たな記事を見出すことができた。さらに、1930年代の釜山に関連する地図・人名録や朝鮮総督府職員録などから、関連する資料をみいだし、釜山考古会が活動した当時の社会的環境を復元することに務めた。こうした資料の収集により、従来知られていなかった釜山考古会の活動をより具体的に復元することができた。
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