本年度はこれまで調査を実施してきた千葉県佐倉市曲輪内貝塚の出土資料や調査記録の分析をおこなった。 これまで分析対象地域に存在する縄文時代後晩期の拠点遺跡は、土器型式にして14型式あまりの期間のあいだ、継続して経営されていたと考えられてきたが、反面、その時間の長さに見合う住居址などの生活居住痕跡の発見が極めて少ない事実が指摘されてきた。 しかし、今回の調査と分析により、その多くは黒色土中に形成されていることがわかり、さらに、これらの遺構はこれまでの調査技術では発見が不可能なものであることが判明した。 加えて、「環状盛土遺構」と呼ばれる遺構は、こうした居住面が累積した結果に形成されたものであることが推測できた。この知見は、これまでの「環状盛土遺構」が特殊な祭祀スタジアムであったという推測と大きく異なる結果である。 こうした成果については目本考古学協会第71回総会研究発表において発表した。また居住遺構の調査方法については、外部の研究者の参加と協力を得て調査現場で検討会を開催し、その成果については、「考古学集刊」特別号において掲載した。 今後は、これらの研究発表で課題として残された遺跡内部の詳細な情報の整理、遺跡相互の構造的比較などについて検討したい。
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