本研究は、縄文時代後期から晩期における遺跡群の地域社会の成り立ちを解明するために、4つのテーマの分析を実施した。 1)一地域内における遺跡の分布状態を検討すること。 2)遺物包含層といわれる土層から人類の活動痕跡を回収する方法を検討し、実際の遺跡の発掘調査によって活動痕跡を観察する。 3)「環状盛土遺構」といわれる遺跡の発掘調査を実施し、その形成過程と性格を解明する。 4)「土器塚」とよばれる土器の集中地点を発掘し、土器製作にかかわる遺跡間関係を解明する。 以上の分析の結果、以下の2つの事実が明らかにできた。「環状盛土遺構」は祭祀遺構ではなく、集落址であること。遺物包含層中の遺物の出土状態の詳細な観察から、さまざまな人類活動の痕跡を取り出すことが可能であること。 そしてこれらの成果から、検討の対象とした遺跡群は、集落間に相互補完的な関係が指摘され、この関係の維持が遺跡群を形成する基本的なシステムであることを指摘できた。
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