研究課題
矢野は縄文時代早期〜前期の遺跡6箇所(大阪府東大阪市神並遺跡、奈良県天理布留遺跡など)の土器胎土を調査し、特徴的胎土(角閃石を大量に含む胎土)の比率を明らかにした。神並遺跡では特徴的胎土は100%で、奈良、京都、福井では30%〜50%である。千葉は縄文時代後期の遺跡1箇所(三重県名張市下川原遺跡)を調査し、特徴的胎土の比率を明らかにした。矢野、千葉らは5箇所から胎土分析用の土器片の提供を受け、プレパラート試料を作成した。他に6箇所の遺跡の資料提供を申請している。清水はこのプレパラート試料を分析中である。中村豊は九州地方、研究協力者の鈴木康二(滋賀県教育委員会)らは岐阜県、矢野らは岡山県の縄文土器胎土についても調査し、特徴的胎土の分布の及ぶ範囲を確認した。矢野らは特徴的胎土の分布の中心である東大阪市生駒山西麓の粘土について、現地調査を行い、土器胎土との違いを確認した。また、研究分担者と協力者を含めた研究会を2回開催した。その結果、縄文土器では、早期においては近畿地方一円で特徴的胎土の分布が30%以上に及ぶ時期があるものの、東大阪市では特徴的胎土は100%を占めることから、特徴的胎土の分布は東大阪市を含む地域を中心として分布することが明らかになった。問題は特徴的胎土の鉱物組成がすべて同じなのか、地域によって差があるのかを明らかにすることで、これはプレパラート試料の分析により来年度明らかにする予定である。さらに、調査遺跡数を広げて、特徴的胎土の分布の詳細を把握し、時期的な変化も明らかにする予定である。研究成果の発表は次年度の研究をふまえた上で行う予定である。