円筒埴輪の製作技法に関する基本的な観察をもとに本年度は2つの方向で研究を進めた。また機会を得て、各地の埴輪資料の観察をおこなった。 ひとつは年代的な位置づけであり、副葬品を中心とした古墳編年との関りについてとくに前期古墳を対象にさらに検討を進めた。副葬品による前期古墳編年とのかかわりでは、鰭付円筒埴輪という要素がもっとも重要な手がかりになることをこれまでにも指摘しているが、さらに細かく対応を組み合わせられる可能性がある。これに関連して学史を整理しながら、古墳の出現に関する議論の中で円筒埴輪が果たした役割についての報告を発表した。 いまひとつは埴輪製作技術からどのように製作工人集団を復元するのかという問題について、学史および研究の現状にもとづいて、視点と方法上の問題について整理した。とくに近年盛んにおこなわれている同工品論の分析成果を集めた。いま埴輪の製作者集団を復元する方法には、技法による系統・集団区分と、同工品論による議論の二者があり、それらが融合しつつある。しかし分析方法の違いは、製作者「集団」のどの側面をとらえているのかという問題と深く関っており、「集団」を構成する諸要素との対応関係をさらに整理する必要がある。埴輪の分析による製作者集団の復元については、平成17年11月26日に大谷女子大学でおこなわれたシンポジウム「円筒埴輪を読み解く」でも他の発表者の意見を整理しながら報告をおこなった。
|