本年度は、日本列島と韓半島の土器を対象にした土器の観察、および研究者と意見交換を行い、また報告書等の文献を検索した。 日本列島においては、主に西日本で行った。それぞれタタキ技法の特徴、出現時期、波及時期などは、1998年に『一色青海遺跡報告書』誌上にわたくしが発表した「東海洋上の初期タタキ技法」を追認する結果になっている。 韓半島の土器については、二度渡韓して、実地調査を実施した。特に、韓半島西南部で松菊里式土器資料に弥生土器に共通したタタキ資料が発見されているので、漢陽大学校博物館で古南里貝塚資料、韓国文化財保護財団で巣松里遺跡と竹清里遺跡資料、高麗大学校で寛倉里遺跡資料、公州大学校博物館烏石里遺跡資料を集中的に観察し、大韓民国の研究者と意見交換の場を持った。そしてタタキ技法を工具、製作工程、身体技法の各面から検討し、日本列島の弥生土器に取り込まれた初期タタキ技法は、韓半島の松菊里式土器のタタキ技法に共通点があること、そのうちの属性から松菊里式土器から弥生土器への移行はありえても、逆の弥生土器から松菊里式土器への移行はありえないこと、また韓半島の粘土帯土器以降のタタキ技法とは決定的な相違点があること、などを確認した。 また報告書等の文献検索は、地域を中国内に限り、また年代はA.D.400年以前に限定して、文字資料の伴出によって絶対年代を明らかにする遺構資料の土器を集成した。これによって、今後中国国内はいうにおよばず、中国外の資料についても併行時期の検討に十分に役立つものと期待される。
|