アジア地域のタタキ技法の検討をとおして、日本列島における弥生土器タタキ技法の波及経路を特定しようとする試みである。 本年度は、日本列島で土器の観察・研究者との意見交換、さらに大韓民国や中華人民共和国で土器の観察・研究者との意見交換をおこなった。 このうち、大韓民国では、江原道考古学会に参加し、無文土器の実態を多くの研究者にご教示いただくとともに、特に楽浪式土器が多量に出土している事実を知った。とともに大韓民国の研究者と、タタキ技法を工具・製作工程・身体技法の視点から観察する必要性があるという点で共通の理解に至った。楽浪式土器は、日本列島の弥生式土器タタキ技法の波及経路を推定するに際して、きわめて重要である。なお北朝鮮人民共和国で、楽浪郡跡と土器を実見する機会をえた。 中華人民共和国では、広東省広州市で、広東省考古研究所、広州市考古研究所、また南越王墓博物館を訪ねた。そして多量の土器を詳細に観察した。そして楽浪式土器に共通する技法をもつ事実を確認した。ただし広東省資料が夏商代であって年代の開きが大きいので、特殊な技法が相互に無関係に発生したか、それとも同一の系譜にあるかが、今後の課題になる。この土器を介して、広東省、および広州市の考古学研究者とタタキ技法の研究視点について、議論する機会をえた。 本年度は、日本ばかりでなく、大韓民国や中華人民共和国の考古研究者と、特に方法論について議論し、これからの研究基盤を共通化するための基礎を固めた。
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