本研究は、東アジア地域のタタキ技法の検討をとおして日本列島における弥生土器タタキ技法の波及経路を特定しようとする試みである。 本年度は、日本列島での観察・研究者との意見交換、さらに大韓民国での土器の観察・研究者との意見交換に力を入れた。 このうち日本列島では、各地の土器の観察を実施したが、特に北部九州において複数の遺跡から出土した土器を、大韓民国考古環境研究所金武重氏と共同で観察検討し、相互の観察指標とその成果の整合をおこなった。すなわちハケメの認定法、第一次タタキと第二次タタキの弁別法、叩き板主軸方向の決定法、叩き円弧中心点の認定、身体技法復原の意義、土器の形態差をこえた技法上の一致の確認等である。 また大韓民国高麗大学においては、李弘鍾氏、趙仁盛氏をはじめとする多くの教官、大学院生、学部学生を対象に、「考古学の進むべき道」と題して、特別講義をおこなった。ここでは、日本考古学の特殊性、その長所と短所の両方を指摘した。このうちでは集成の変遷を例にして日本考古学に内在する弱点を具体的に指摘し、大韓民国の研究者の理解をえた。そしてタタキ技法に関しては、パワーポイントを使用して、具体的に土器を示して丁寧に説明するように心がけた。そして技法の検討から推定できる文化伝播におよぶ発表をした。このようにして技法の観点を考古学に導入することの意義を講義した。また共同研究をおこなう際の留意点についても言及した。 本年度は、本研究の最終年度であたるため、特にこの研究の視点、観察指標の普遍化、そしてその成果の普及につとめた。
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