東アジアにおける弥生時代タタキ技法の波及経路を特定する研究は、まず東アジアにおけるタタキ技法の網羅的な研究、次に弥生時代タタキ技法の特徴把握、さらには東アジアにおける弥生時代タタキ技法の位置づけ、そしてその時系列にしたがった技術波及の研究へとおよぶ。本研究はこの段階を踏んで進めるように心がけたが、実際には幾つかの研究段階を併行しておこなうことになった。 タタキ技法を製作工程、製作工具、身体技法の3つの視点から検討した。その結果、弥生時代タタキ技法は東アジアの中においてきわめて特徴的であって、その判別が比較的容易であることがわかった。その成果を実際の土器にあてて検討すると、朝鮮半島西南部地域に無文土器時代に到来したタタキ技法に直接の淵源があり、この波及が日本列島におよんだ結果、弥生時代タタキ技法が日本列島において成立したことが明らかになった。現在の資料によれば、朝鮮半島の無文土器の内では松菊里式土器に、また日本列島の弥生土器では板付II式土器に最古のタタキ技法が認められた。ただし今後の調査検討によって、さらに古い資料がみつかり出現時期が遡る可能性があるものの、その技法上の特徴に大きな違いが生じる可能性はほとんどない。中国においては、この種の製作技法の検討は、きわめて困難な状況にある。それは、資料の収集が悉皆でないことに起因する。今後、比較資料の検討に当たっては、小片になった資料の検討の機会をいかにつくるかが問題である。その機会をえさえすれば、本研究成果は、きわめて適用可能である。 なお大韓民国、中華人民共和国において、各国の研究者との共同研究ばかりでなく、口頭発表やさらに論文が翻訳されており、これからの各地での研究が待たれることとなった。
|