研究概要 |
本年度は,八瀬童子の空間認識を解明するために(1)と(2)の2点を,また歴史意識の解明のために(3)の研究を行った。以下,その概要を記す。 (1)宝永「老中連署山門結界絵図」の所在調査と撮影 「老中連署山門結界絵図」は,八瀬童子の空間認識を解明する際の基本史料である。この所在調査を行い,叡山文庫,八瀬童子会,陽明文庫,東京大学史料編纂所に現存することを確認した。また,叡山文庫には下図も現存することが明らかになった。これらの絵図を撮影し,パソコンを用いて絵図の画像処理を行い,絵図の作成時期の前後関係,ならびに絵図の図像表現の検討を行った。 (2)絵図をもとにした八瀬と比叡山の境界の現地比定 上記の絵図に描かれた八瀬と比叡山の境界を示す墨線は,空中写真,国土基本図,山林所有図などを照合し一部現地踏査した結果,現在の琵琶湖国定公園の西端と一致することが明らかとなった。 (3)赦免地踊りの映像記録と聞き取り調査 赦免地踊りは上記の宝永の裁許後に成立した民俗芸能ではあるが,現在でもその株座や儀礼祭祀から,平安中期からの祭祀長老制を残しているものと考えられる。また,歴史における時間論を再考し,中世の歴史意識の考察も行った。 研究結果の詳細は,2004年2月27日,東京大学史料編纂所画像史料解析センター研究集会にて,小野寺,杉本,宇野,西谷地がそれぞれ公開報告を行い,内外の研究者の参加を得た。
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