研究概要 |
本年度は,主に以下の調査・研究を行った。 (1)宝永「老中連署山門結界絵図」のデジタル復元図の作成 「老中連署山門結界絵図」は八瀬童子会,叡山文庫(止観院・生源寺),陽明文庫,東京大学史料編纂所に現存する。これらの絵図の写真版をもとに,デジタル復元図を作成した。絵図に描かれた八瀬と比叡山の境界を示す墨線の現地比定,結界線である白線の意味を検討し,絵図の作成時期の前後関係,ならびに絵図の図像表現の特色を明らかにした。 (2)八瀬と比叡山の争論が発生した経済的背景の解明 「老中連署山門結界絵図」は八瀬と比叡山の争論を図示している。この争論の発生は八瀬・大原・高野などで行われていた柴の採取が原因であった。八瀬と大原のオハラメは比叡山山麓で柴を採取し,京の市中で柴を売り歩いた。聞き取りと文書によって,オハラメに関するあらたな知見を得た。また,この調査によって大原・八瀬の古文書を数多く見出すことができた。 (3)近現代における八瀬童子の活動と赦免地踊り 中近世における八瀬童子の活動を古文書で明らかにするとともに,近現代における人瀬童子の活動と赦免地踊りについて,新たな知見を得ることができた。 2005年3月7日,研究成果の一部を八瀬小学校(京都市左京区八瀬)において公開報告し,100名以上の地域住民,ならびに研究者の参加を得た。この報告会は京都新聞でも取り上げられ,研究成果の地域への還元という意義をもった。
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