研究概要 |
1999年3月31日に存在した3,232の市町村は、第1次平成の大合併が終了した2006年3月31日には、1,821となるわが国の歴史上3度目となる大規模な市町村大合併であった。本プロジェクトでは、平成の大合併を特徴づける「庁舎の方式」に注目して、新市町村内に形成される都市・地域システムの再編成と、新広域自治体の地域政策のあり方を調査・分析した。多くの成果が得られたが、主要なものは下記のとおりである。 1)2006年3月31日までの合併の進展度合いには大きな違いがあり、合併に参加した市町村の割合は全国で60.9%、最高値は愛媛県の97.1%、最低値は大阪府の4.5%であった。 2)合併によって、2006年3月31日までに、全国で新たに形成された557市町村のうち、組織不明の43を除く、514の庁舎の方式は、本庁支所方式が163(31.8%)、総合支所方式が217(42.3%)、分庁方式が133(25.9%)であった。庁舎の方式の選択は、合併の形態(新設合併・編入合併)、地域タイプ(都市圏型・連携型)、新自治体の面積・人口の規模の大小と密接に結びついていた。 3)北海道・宮城県・静岡県・鳥取県・福岡県・長崎県の新市町村を対象に、インタビュー調査を行った。 その結果、採用された庁舎の方式・組織には、権限(予算編成権・専決代決規定など)・人員配置・情報伝達共有の方法・IT導入実態(電子自治体)・地元地域への影響・地区内自治組織(地域審議会)の結成活用に大きな違いがあることが判明した。 そして、合併後には庁舎の方式に特有の「行政運営(情報共有と合意形成)での問題点」「本庁・支所間の地域的バランス(都市・地域システム)の不均衡」を抱えており、完全無欠な庁舎の方式は存在しないことが明らかとなった。どれを行政上の優先事項とするかを決定し、庁舎の方式を選択するのは住民とすべきである。
|