研究概要 |
本研究は,筆者が移動就業者の一例である水産物行商人の分布と活動の展開に関して1980年代に行った全国調査の結果を踏まえ,(1)それ以降の活動変容を明らかにするための全国追跡調査(平成15年度)と,(2)個別事例研究の成果(熊本市と天草地区の比較,群馬県沼田地区他;平成16年度)をもとに,かつて全国津々浦々でみられ,近年急速に消え去りつつある水産物行商活動に関する地理学からの体系的研究を企図したものである。 今年度実施した全国調査は,先に調査,論文化した中国,九州地方に続けて,5月までに関東地方,8月に中部,近畿地方,9月に四国地方,11〜12月に北海道・東北地方の全都道府県庁食品衛生関係機関を回って,営業者数の変化,保健所区別の営業者数の他,関連条例法規の内容,および近年の状況に関する聞き取り調査,県立図書館などにおける関連文献の入手を行った。その成果については,現在,「宮崎大学教育文化学部紀要」に順次発表中である。 全体的な傾向として,在来型行商(伝統的な漁村女性労働の系譜をひく行商形態)人は,全国的に減少傾向が顕著であり,内陸諸県ではほとんどなくなった所もあった。ただし,都市近郊地区などで増えた地区もみられる。自動車営業者も全国的に減少しているが,減少率は在来型行商ほど大きくない。かつて,分布上の特徴として,沿岸漁村に集中する在来型行商に対し,離島,山間僻地に強い自動車営業という明瞭な営業地の住み分けがみとめられた。この傾向は,今日でも概ねみとめられるが,自動車営業に関しては,僻地においても営業者数が急減する例外的な事例もあり,今後,より詳細な地域的分析が必要である。
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