1 蛇聟入・苧環型の伝説、昔話の資料調査および現地調査 青森・山形・福島・新潟・富山・山梨・群馬・徳島・香川・愛媛・高知・佐賀・長崎県の県立図書館にて資料調査を行い、伝承地については、現地調査を行った。 2 データベースの作成 上記調査地域で得た資料のデータベース化作業を行った。昔話については、11項目、伝説については13項目にわたってデータベースを作成した。伝説については、伝承された場所の写真、地図、聞き取り、VTRの撮影も行い、データベース化した。 3 データベースに基づく定量化作業 昔話と伝説のデータベースに基づいて、話型、景観、権力の関係性を見るために、定量化作業を行った。その結果、伝説、昔話において、話型の変容と、景観、権力の変容が対応していることが分かった。そのことによって、民間説話が、話型だけでなく、地域の景観や権力と密接に関連しながら、語られていることが分かった。 4 語られる場所の地図化 伝説で語られる場所を特定し、地図化することによって、どの地域のどの権力者の開拓神話であるかを、特定していった。その結果、民間説話が言語世界だけでなく、空間世界においても、重要な役割を演じていることが分かった。 5 日本人の環境知覚の変遷 本伝承は、『古事記』の神婚神話を原点とし、時代を経て、伝説、昔話へと変容していったと考えられる。その変容過程において、語られる話型、場所、人物、語る主体も、ジャンルの変容に対応する形で変化していった。大きくは古代から地方の中世にかけての神話が、近世からの伝説化、昔話化が想定される。特に語られる場所の変化は、日本人の環境知覚の変遷を見出す材料となった。
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