研究課題
基盤研究(C)
近年において世界各国の先住民が、国家に対して自らが居住してきた土地に対する利用権や所有権を請求するようになっている。これは、「先住民の土地権運動」と呼ばれ、その背景には、鉱山開発や観光開発などの国家の地域開発がすすめられ、先住民の人権を考慮することなく彼らを強制的に移住させてきた点が挙げられる。この研究では、南部アフリカの先住民としてよく知られるサン(ブッシュマン、バサルワ)社会を対象にする。本稿では、ボツワナのサン社会を事例に、先住民サンの土地利用の歴史、サンの先住民運動の様相を把握することを目的とする。筆者は、ボツワナのハンシー県、ンガミランド県、セントラル県においてサンの土地利用史や土地権運動に関わる現地調査を行った。その結果、彼らの先住民運動の実態、彼らの生活様式のなかでの運動の役割などを把握することから、サン自らが自らの先住性を示すために土地利用の歴史を新たに注目していることが明らかになった。なお、南部アフリカのなかで南アフリカでは、すでに先住民が土地権を獲得しており、土地利用の仕方についての論議がみられる。ボツワナでは、先住民が政府の移住政策に対する裁判を実施している最中で、現時点においてもその決着をみてはいない。本稿は、直接に先住民運動の是非を論議するものではないが、先住民サンの歴史と現在についての基礎的な資料を提供している。
すべて 2004 その他
すべて 雑誌論文 (4件)
歴史科学 178
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遊動民(田中二郎ほか編)
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