平成15年度においては、おおむね以下のような調査研究および作業を行った。 1.本研究において主たる調査地としている新潟県上越市では、しばしばタビという言葉で生活範囲の内部と外部とを表現しようとする。この場合はタビとは単に旅行することではなく、就職や出稼ぎ等により短期あるいは長期にわたって郷里を離れることであり、他府県、とりわけ首都圏に家族とともに居をかまえることまでも含まれる。反対に転勤等で上越地方にやってきてこの土地の住人になった人々も、相当長期間のあいだ「タビの人」という言葉で呼ばれることになる。そしてこの言葉も静態的な概念ではなく、時代とともに意味内容にずれが生じてくる様相も明らかになった。 2.上越地方は日本でも有数の豪雪地帯である。そこで、この地方における生活のなかで雪という自然現象がどのような位置をしめているか、またそれに対処する方法としてどのような方策がなされてきたのか、等々の点について調査をおこなった。またその災害としての側面についても資料収集を行った。その結果、いわゆる高度経済成長期が大きな画期となることが判明したが、その場合にも、もたらしたものは功罪相半ばするという興味深い事実がみられた。 3.その他、数度にわたるインタビュー調査をおこなったが、その調査データおよび、真野がこれまでの調査活動において集積してきたインタビュー調査のテープ・リライティングをすすめた。これは膨大な量に及ぶので、2年目以降もすすめる予定である。この作業と並行して、新潟県とりわけ上越地方在住の民俗研究者と、上越地方の民俗文化の実態や歴史、さらには特質等について、ディスカッションを行った。
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